【アカペラ始めました】初めて「ハモる」ということがわかった話。

親のおかげで、小さい頃からずっと音楽に親しんでいた。
3歳から、ピアノとエレクトーンを。中学校でやめてしまったが、その後エレキギターをやってみたりなんかもした。母が合唱を結構本気でやっていた人なので、歌にも親しんでいた。
私は練習をサボりまくったので、いずれも大成はしていないけれど、なかなか音楽とともに生きている21年間だと思う。

そんな感じだったから、楽器で和音を鳴らすことには慣れていた。先生が弾いたピアノの音は綺麗だなと思っていたし、発表会で他人の演奏を聴くのも好きだった。
「ああ、これが和音か」と思っていた。ずっと。

それが覆ったのがつい最近だった。
20歳の春、私はアカペラを始めた。歌をもっと頑張りたいからなんとなく、という理由で。

そこで聞いた一つの歌に、私は膝から崩れ落ちた。

動けなかった。天から舞い降りたのかと思った。比喩ではなく本当に。
音がかっちりと「はまって」いた。
今まで聞いていた和音はなんだったんだろうと思うくらい、一寸のズレもなく。

世界が崩れていく。
私の聞いていた「和音」は、いつもどこかにズレがあったらしい。平均律純正律の話を人から聞いた時(超ざっくり言うと、ピアノの音は完全にハモる音よりもちょっと三度が高めらしいです。気になる人は調べてみてください)、私は妙に納得して、それとともに突然の恐怖に襲われた。

きっとこれから先、どこまでも私の耳は声によって奏でられる和音を求めてしまう。小さい頃からピアノにハマりきれなかった理由を「平均律に対する違和感」と形容できてしまえば、もう昔の耳には戻れない。
あれだけ好きな音色だったのに。
全ての楽器の中で、一番好きな音だったのに。
怖い。
怖いけれど、すでに取り返しがつかないくらい声にのめり込んでいる自分がいるのだ。

まだ何が起きているのかわからないけれど、
誰かと歌っている最中に、一瞬空気を切り裂いたかのように雑音が搔き消える瞬間とか、
和音を鳴らす練習の時に、一度五度に導かれるように三度が自然に唇から漏れ出る瞬間とか、
なんかそういう、ピースがはまっていくような快感を、どうしても求めてしまう。

今はとりあえず求めるがままに歌っているけれど、どこに着地するんだろうな、私は。

 

ちなみにこれを書いている間に初めて自分が抱いている感情が「怖い」であったことに気がつきました。